2016年5月31日火曜日

夜の海

静寂がしっくりと身体に馴染む夜

膨らんでいく頭の中で
身体のない子どもを抱く

子宮の奥の海底に
置き去りにされた一粒

誰も知らない

誰にも見えない

白砂に混じったその一粒を

ただまっすぐに 見ている

女は身体に海をもつ
暗く 深く 透き通った その青
寄せて返す波の音



―――もう 聴こえない――-


 
女は 待っている
あの日干上がってしまった海に
ふたたび潮の満ちるのを
いつか
この身体ごと
波がさらってくれるのを

ただ

じっと

待っている