静寂がしっくりと身体に馴染む夜
膨らんでいく頭の中で
身体のない子どもを抱く
子宮の奥の海底に
置き去りにされた一粒
誰も知らない
誰にも見えない
白砂に混じったその一粒を
ただまっすぐに 見ている
女は身体に海をもつ
暗く 深く 透き通った その青
寄せて返す波の音
―――もう 聴こえない――-
女は 待っている
あの日干上がってしまった海に
ふたたび潮の満ちるのを
いつか
この身体ごと
波がさらってくれるのを
ただ
じっと
待っている